金属片やむなし

君の影を踏みに。

夢見るころを過ぎても

どうにもズボンのチャックが開いていることが多い。朝にチャックを閉めぬまま家を出て、夕方になるまで気づかないことすらある。


だいたいの場合において股間はシャツで隠れていて衆目に晒されることはない。よしんば何かの拍子に見えたところで見えるのは下着、ただの布である。何の問題もない。
などと言い切れるくらいのメンタルを持ち合わせたいものだがあくまでも理想は理想、……ちょっと待って、恥ずかしくなくなれば問題解決ではあるのだけどチャックを開けたまま平然としていられるのが理想かと言われるとちょっとちがう、そうだチャック閉めよう。


というわけでチャックを閉めることにした。もちろんこれまでも閉めなかった訳ではない。できるだけ閉めるようにはしていた。では意識が低かったのか。そうかもしれない。
しかし意識が高かったとしても、ヒューマンエラーは避けられるものではない。人間は誰しもが間違う、それを前提としたシステムを構築するのが社会人としての常識であろう。


では具体的にどうするのか。
コンピウタを利用するのが適当だろう。それもいつも持ち歩いているポケットの中の未来、そう、スマートフォンによる管理である。
チャックが開いていないかチェックするアプリを作ろう(いま韻ふんだからな)。おれだけでなく、世界中のチャックが開きがちな人たちがちょっと幸せになれるじゃないか。そう! 未来は変えられる! たとえ夢見がちと言われようがチャックが開きがちだろうが、開きがちだった今日を開いてない明日にできるんだ!


しかしながらスマートフォンには大きな弱点がある。バッテリーだ。バッテリーが切れてしまうとスマートフォンはただの文鎮と化す(いま「文鎮」で下ネタを思いついたが詳しくは書かない。思いついたという事実だけを記すに止める)。
そこで提案したいのが、「股間部分にポケットを付ける」ということである。そこにスマートフォンを入れるのだ。スマートフォンはいつも持ち歩くものだから、チャックを必ず意識するようになる。チャックをジーっと開けてスマフォをイン。ジーっと閉める。完壁!
街で地図を見るとき、ジー。信号待ちでTwitterをチェックするとき、ジー。電車でこれから行く店の評判を調べるとき、ジー。いつでもどこでも、ジー、ジー、ジー。TwitterやLINEの通知が来たときのためにバイブはオフにしておこうな!


途中で下ネタ回避しようとしたのに結局このザマである! このザマというか惨状だ! 大惨事だ! いちばん責任取りたくないヤツだ! ギャーーー!!


※ 文中で「完璧」を「完壁」としているのに気づいたひとはもうちょっと大らかに生きたほうがいいと思います。