泥舟から逃げるように。
とある喫茶店の傍で「期限が近づいてしまったので」と手書きのポップと共に某社製「上乗せドリップコーヒー」1箱100杯分を1000円で売られていた。ハハハこの正直者め。
今日はちょっと暗い話になる。なぜなら今のおれが暗い気分だからだ。
久しぶりにlivetuneの「Tell Your World」を耳にする機会があって、ちょっと考え込んでしまった。
2011年に発表されたこのボカロ曲はGoogleのテレビCMに使われた。MMDを使ったMVも非常に良くできていて、草の根クリエイターがネットを通じて世界とつながっていく未来を描いていた。おそらく初音ミクが肯定的な意味のみでマスメディアに使われた最初の事例だ。初音ミクの発売は2007年、それから4年という月日を経てようやくマスに届いた。それもGoogleという企業の商業CMで。ちょっと泣いたよね。
未来は明るい、レッドオーシャンではあるかもしれないけど、がんばっていいものを作れば報われるんだってメッセージ。こんなにも多幸感に満ちたものなんだから、ちょっとくらい涙を流したっていいだろ?
翻ってあれから5年後の2016年現在。その後に起きたことはご存知の通りだ。「好きなことして生きていく」Youtuberは愚にもつかない痴態を繰り返し、近ごろではブログ界隈もそれに追従しているように見える。
Googleはインテリジェンスの極北で、「みんなが望むこと」を実現する企業だ。ひとの欲望を解析してそれに応える。それはきっと正しい。ただその「結果」がワイドショーに見えるのが少しさみしいのだ。
かつて夢見た集合知がユーチューバー的なものに汚染されていく。それが人類の「意思」の発現なのだと思うと、わりと人類なるものに冷たい視線を送らざるを得ない。
かつてテレビが人々の欲望を反映して堕していったように、インターネットもまた同じ闇に堕ちゆくのか。マスとなることは敗北と等しいのか。
もう少しだけ夢を見ていたいだけなのに。