金属片やむなし

君の影を踏みに。

Atomic Camera

写真を撮るのが好きで、毎日のように大きな一眼レフをぶら下げて歩いている。
カメラにそれなりの存在感があるため、見知らぬ人から話しかけられることもある。「お兄さん写真やるんだ」ええ、下手の横好きですけどたのしいですよ。「1枚撮ってよ」え、あ、ハイ喜んで。「私もカメラはじめようと思ってるんです」いいですねまずこのカメラで試し撮りしてみましょうか。
だがまあポジティブな反応ばかりではない。世の中には「撮られたくない人々」が存在する。

日曜日、朝の銀座は人通りもすくない。ああキレイだなあ、と何枚か撮っていると背後から初老の男性が近づいてきた。
「お兄さん、写真撮るんだ」
「あ、ハイ」
「最近はインターネットっていうの? そういうのもあるから、あんまり人が写らないようにしないとねえ」
「おっしゃる通りです」
懸念はわかる。というかネットの発達以前からストリートスナップは殴られるのを覚悟で撮る必要があったと聞く。

金曜日、夜の新宿ゴールデン街。とくに写真を撮ろうというつもりもなく、どこで飲もうかな、とふらついていたところ突然「あんたカメラなんかぶら下げてお上りさんじゃないんだから!」見れば年老いた女性、「ダメだよこんなとこで写真なんか撮っちゃ! みんなそれぞれの人生があるんだから!」
すみません配慮に欠けていました。一応ストラップを純正のもの(カメラが正面を向く)からスピードストラップ(たすき掛けでカメラは斜め下を向く)にして威圧感のないようにしてたんですが。

水曜日、仕事帰りの新宿歌舞伎町。路上のキャッチをすり抜けようとしたところ、
「お兄さん、これからハメ撮りするのハメ撮り!?」
そんな訳あるか! おれは「お兄さん」じゃなくておっさんなんだよ!(突っ込み間違い)

とまあ、「撮られたくない人」は割と攻撃的になることが多い。それは理解するし、ぶっちゃけおれも撮られたくない。
でもちょっと待ってほしい。おれは撮ってないし、撮るつもりもない。っていうか撮るつもりなら大きく目立つ一眼じゃなくてスマホで撮る。もっと言うと盗撮専用のものもあるし、っつーか歌舞伎町なんて街頭の監視カメラで殆どトレス可能になっている。鉄道の駅だってそうだ。かてて加えて画像の解析技術はモリモリ進化しているし、パチンコ屋が客の顔解析技術の特許を取ってから何年たったことか。スマートフォンとドライブレコーダの普及でアカシックレコードは完成されつつある。そして理論上すべての個人情報は流出を避けられないのは交通事故で人が死ぬのを避けられないのと等しく、それでも人は自動車を捨てられないではないか。

結局なにが言いたいかっつーと、人類よ、プライバシーをあきらめておれに写真を撮らせてくれってことだ。かつてなされた地上核実験よりはナンボかマシだろ?