金属片やむなし

君の影を踏みに。

ゾゾーム。

酷い虐待を受けた。
自己の排泄物を提出させられ、腕に針を刺して血液を採取され、胸部に放射線を照射され、身体中に電極を貼られた。アルカリ土類金属と発泡剤を無理やり喉に流し込まれ、言われるがままに様々な体位をとるよう強要され、肋骨をこれでもかと圧迫された挙句に下剤を投与された。自ら服をはだけるよう指示され、喉や脇腹を触られた。おれは他人から触られるのがとても苦手である。

すこし大袈裟になってしまったが、健康診断ってホントにこう、人間性を否定されるというかなんというか。受診したのが健康診断に特化したクリニックなので、実に効率よく考えられていて、流れ作業チックというかベルトコンベアに乗せられた鶏肉が加工されていく気分ってこんな感じ? とか気分が鬱蒼としていく。

で、ね。
そこで身長も測定するわけです。結果は169.8センチ。このどうにも扱いづらい数字よ。

誰かから身長を訊かれたとする。この場合おれはどう答えるべきなのか。
「169.8センチです」
細けえな! ミリ単位とか知らねえし!
「170です」
いやお前170ないじゃん! セコくサバ読んでんじゃねえよ!
「169です」
いや169.8を169とか、四捨五入って知ってる?
「四捨五入して170です」
あー、166とかそんな感じ?

非常にめんどくさい。
たぶん170.2センチの人は「170です」でなんの問題もないのだ。170を中央値として、2ミリオーバーは許容されて2ミリアンダーが許されないというのはおかしくないか。走り高跳びみたいに、クリアしたか否かを基準にするから妙なことになるのだ。この2ミリの攻防よ!

146センチとかなり小柄の女性知り合いであった。彼女は150センチと公称していたので、「さすがに4センチってサバ読みすぎじゃね?」と問うと、「いいんだよ。普通の人には150センチ以下なんて全部いっしょに見えるんだから」と実に清々しい答えが返ってきて、かっこいいなこいつ、と思った記憶がある。