金属片やむなし

君の影を踏みに。

指弾

iPhoneが指紋を認識してくれない。
新規登録しようとしても、左右の指10本とも「この指紋は使えません」などと言われる。いよいよおれの生命力も枯れ果てる寸前か、と何かを達観したような気分になりかけるが、とは言え不便だよねえ、と。

しかたがないので指先以外の部分で登録してみた。具体的には指の第2節や指裏の関節などである。なんとか登録はできたのだけど、いずれも不安定で実用性に欠ける。他に使えそうな場所はないかと考えるも、iOS指紋認証はホームボタンを覆う必要がある。つくづく人間の身体というのは突起物がすくないのだな、とおもう。

鼻、牛の個体認識には鼻紋を使うらしいけど、人間の鼻には鼻紋がない。
唇、iPhoneにキスすんの? すげえナルシストっぽいんだけど。
舌先、新手の妖怪「電話舐め」と誤解される危険性がある。いや誤解されてもいいんだけどさ。
足指、靴下脱ぐよかパスコード入れる方が早い。 思いつく候補が次々と却下される。もう考えつく箇所が「パンツを脱ぐよりパスコードを」みたいな下ネタにならざるを得ない。脱がねえぞ。

もしかして故障なのではないか、と友人に渡してみたところ、その指は認証できた。じゃあ本格的におれが死にかけてんのか、と彼のiPhone7を触ったところ、ちゃんと認識してくれた。

つまりおれのiPhone6と友人のiPhone7を交換すればいいのだ。他に考えられる解決策は彼とおれの指を交換することだが、それは現実的ではない。指の移植手術に比べたらiPhoneの交換のなんと簡単なことか! 画面の割れたiPhone6と新品のiPhone7を交換だ!