金属片やむなし

君の影を踏みに。

Cat walk

自分でできることは、自分でやればいい。

たいがいのことはトライ&エラーを繰り返せばできるようになるし、やってみることで見えてくるものは多い。

昼休み、昼食を摂るための店を物色していると、ふと「猫が人間になったらどう歩くのだろう?」と疑問におもった。

自分でできることは、自分でやればいい。

やってみよう。

猫の歩みは、人間よりもサスペンションがやわらかい感じだ。足首とか膝をやわらかくしてみる。

猫が人間になったら、きっと猫であったクセが抜けないだろう。すなわち前脚であった肩も連動してしまうに違いない。ちょっと肩を揺らすように歩こう。そうすると腰を回転させる必要が出てくるな。でも頭は動かないように。こんな感じか。

おれの中でどんどん完成度が高まっていく。自分の身体感覚を普段の「人間のつもりであるところの人間」から「猫が人間になったなにか」にシフトチェンジする。いつもより肉体を意識するようになる。これだ。

おれは「人間になった猫」のように歩いているのだけど、きっと道ゆく人たちはそれに気づいていない。「なんか妙な歩きかたをしているバカがいるな」くらいに思うのが関の山であろう。ひそやかな愉悦がここにある。

……ふふふ、おれは今「人間になった猫」のつもりで歩いているのだ。君たちは知らないだろうけど。

ファッションショーなんかでモデルが歩く花道を英語でCat walkと言う。モデル歩きが猫っぽいかというとそうでもない。

自分でできることは、自分でやればいい。

やったからといって何かの役にたつわけではない。

……おれは一体なにをしているのか。