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金属片やむなし

君の影を踏みに。

小器用な猫

先日商店街を歩いていたところ、道ゆくおねえさんがすれ違いざまに足をもつれさせたのか、突然しなだれかかるように抱きついてきた。おれは驚きながらも肩を入れて彼女の体を支え、「大丈夫ですか?」と紳士的に訊いたのだが、混乱しているのだろう、おれの顔を見て目を白黒させるばかりで声が出ない様子。仕方がないので彼女の上体を持ち上げるようにして立たせ(驚くほど軽かった!)、支えがなくても大丈夫なことを確認して「もう大丈夫ですよ」と言うとようやく「すみません、ありがとうございます」と蚊の鳴くような声を絞り出した。香水だろうか、シトラスの香りが初冬の風にまぎれてツン、と鼻腔をくすぐった。

こんなマンガみたいなことってあるんだなあ、と思った。もちろんそれ以上に何かがあったわけでもなく、ペコリペコリと頭を下げ続ける彼女に少しの申し訳なさを感じつつ「お気をつけて」とその場を去った。うわおれちょう紳士じゃん!

思えば彼女は7〜80代、足のもつれやすいお年頃である。お年寄りには親切にしたいものだ。