金属片やむなし

君の影を踏みに。

ニンゲンのアライ

料理の話をしよう。

とてもとても新鮮な、それこそ生きたままの羊をオーブンに入れます。温度は22度、付け合せに干し草も入れましょう。それと新鮮な水を欠かしてはなりません。
じっくりと加熱します。1週間かけて、24度まで加熱しましょう。その間に減った干し草を追加することを忘れずに。排泄物は適宜処理し、伸びすぎた毛は刈りましょう。できる限りの愛情をもって加熱することが肝心です。もしかしたら加熱の途中で出産するかもしれません。慣れていないのなら獣医を呼びましょう。きっとそれはそれは可愛らしい子羊と会えることでしょう。

鯉や鱸の調理法に「洗い」ってのがある。削いだ身を氷水に落として締める、というものだ。

いやに短い秋が終わり冬になった。特に今宵は触れたら切れるよな寒さだ。関東地方で積雪なんて話もでてる。僕たちニンゲンも調理されている途中に違いあるまい。24度のオーブンで加熱される羊は1週間のうち何度「メー」って鳴くのだろう。僕たちはこの冬にどんなことばを吐けるのか。

最終的にはおいしく召し上がっていただきたいのだが、さて。