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金属片やむなし

君の影を踏みに。

「この世界の片隅に」をリピートしてきた

これだけネットで評判になっているのだから今さら俺が書くようなことはない。なのだけどこの映画はもっと観られていいはずで、もうちょっと賑やかしたいのだ。昔から「枯れ木も山の賑わい」と言うではないか。誰が枯れ木だ。

感想を書く気もない。何を書いても陳腐に堕する気がする。というか、語りたくない。胸の内にしまっておきたい。

俺は2回観たのだけど、いずれも終映後に席から立つことができなかった。ともすれば震えそうになる口元を右手で隠し、冬の夜が早く訪れることに感謝しながら闇に紛れて街をふらつき、公園の喫煙所でたばこを吸って、息を吐いた。煙はゆっくりと揺らぎながら上り、消えていく。夜空に希釈されて消えたのか、闇に紛れて見えなくなったのか。

この作品がおもしろいか? と訊かれても俺は「わからない」と答える。ただこれは俺にとって「トテモ大切な」作品となったとは胸を張って言える。

……俺だって本当はこんなクサい文章なんて書きたくないんだ。いつものようにヘラヘラと訳のわからないことを書いていたい。でも、それでも、恥を忍んで書いている。なぜならこの文章を読んでくれた「あなた」に観てほしいからだ。

最後にひとつだけ。映画が終わっても客電が付くまで決して席を立ってはいけない。トイレに立つくらいならその場で漏らせ。それだけの価値はある。