金属片やむなし

君の影を踏みに。

化粧扇子

今年は珍しく扇子を失くしていない。
例年だと年に10本ほどの扇子をなくしている。ピックとライターに次いで失くなるもののひとつだが、これらと決定的に異なるのは、扇子は外出先で失くなるということだ。

ピックとライターは室内で失くなる。というか、妖怪ピック隠しと妖怪ライターヴァニッシャーの仕業である(妖怪? ヴァニッシャー?)。
扇子は妖怪のせいではない。おれの不注意で失くすのだ。都内のカフェや居酒屋、南インド料理屋やネイティブネパール料理屋などに、おれがいた痕跡を残していく。おれの存在ははかない(パンツくらいは履いている)ので、せめて扇子くらいは残していこうとするのだ。肉親から口減らしとして遺棄されたヘンゼルとグレーテルが道しるべとしてパンを撒くように、おれは扇子を撒く。ためにおれの扇子には「ここにいた」と書くようにしている。もし都内でそのような扇子を見かけたら、そっと持ち帰ってほしい。おれがいたことの小さなかけらである。もちろん嘘なのだが。

ところでお菓子の家の魔女はヘンゼルを太らせて食べるためにグレーテルにごちそうを作らせる。牛肉1キロを生産するのに必要なトウモロコシは10〜30キロと言われているが、ヘンゼル肉1キロを生産するのに必要なエネルギー量を1ヘンゼル=10グレーテルごちそうと呼ぶとしよう。魔女はトウモロコシのみにて生くるにあらず、ケーキを食べればいいじゃない! いったい何を書いているんだおれは!

この童話をブログのネタにするのは二度めだし、ケーキを食べればいいじゃない、というのも何度かネタにしている。もう慣れたものだ。ところで「大人の王様ゲーム」というのを思いついたことはもう書いたっけ?

「王様だーれだ?」
「俺おれ!」
「吊るせ! 王を吊るせ!」

…… 革命で王様がギロチンにかけられるゲームだ。ギロチンに切り落とされ、首だけになってなおじょうずに民衆を睨みつけられたら王様の勝ち、首塚を建立してもらえます。おめでとう!

今日のはさすがに自分でも気持ち悪いことを書いているという自覚がある。いつもこんなことを考えているわけではないし、たまにはヘンゼル肉も食べたい。扇子を失くすという話題から思いつきと連想だけで文章を書いていたらここに着地した。着地失敗!